信託で争族を回避

認知症対策だけではない

 民事信託(家族信託)は、信託財産を受託者の判断で管理できるところから、認知症になっても資産が有効活用できます。

 

 また、信託を設定すると、委託者兼当初受益者死亡後の受益者や残余財産帰属権利者などを設定できます。これにより、いわゆる遺言に代わる効果(遺言代用信託)が発生します。

 

 特に不動産登記などでは、遺言による変更よりもさらに簡単に変更登記できるようになります。

 

 相続手続きに係るトラブル(争族)を回避する目的にも効果的です。



親権者が信用できない

 一郎さんの一人息子は、病気で若くして亡くなりました。推定相続人は、未成年の三郎さんだけです。唯一の直系である三郎さんに全財産を相続させるのは一郎さんの希望でもあります。

 

 一郎さんは、浪費家である一子さんを信用していません。三郎さんに相続された財産が一子さんに散財されるのは回避したいのです。

 

 しかし、特に三郎さんが未成年の間に相続された場合、法定代理人になる一子さんの管理となってしまいます。

 

 一郎さんは、信託契約を締結し、信頼する甥に受託者となってもらい、三郎さんが25歳になるまでは、受益権として給付することにしました。25歳になり、自分で財産管理ができるようになってから所有権を渡すことで一子さんに財産を荒らされるリスクを回避できます。



実家の処分をやりやすく

 争族になりやすいのが、不動産の分割です。

 

 金銭と違い、自宅を1/3もらっても使いようがありません。最悪、共有状態になり売買など処分の意思決定が難しくなり、空き家として朽ち果てる末路があります。

 

 自宅を信託財産として、受託者の判断で処分ができるようにします。親が施設に入った後は、受託者の判断で賃貸してもいいですし、条件が合えば売却することも容易になります。

 

 家賃収入や売却代金は、親の生存中は生活資金として活用し、相続発生後は相続人で分割できます。自宅現物ではなく金銭ですので、1/3であっても使える財産になります。