受託者の役割

 家族信託の中で、権利義務ともに大きく重要な役割を担うのが受託者です。

 

 家族信託の場合、信託がスタートした後は当事者で全ての事務を行います。信託監督人に専門家を付けることもありますが、基本的に法律知識があまりない素人が運営をします。

 

受託者を引き受けようとする方は、困ったときの相談者をつくることに加え、役割をしっかりと理解する必要があります。


【受託者とは】

受託者とは、信託の事務を遂行する者である。

ここで言う「事務」とは、デスクワークということではなく、「信託を運営するのに必要なすべての仕事」ということです。

 

受託者は、信託財産の移転を受けて財産の名義人になり、信託の目的を達成する義務を負います。ですから、受託者には信任義務という厳格な義務と責任をもって信託事務に当たらなければなりません。

 

家庭裁判所の管理下にある成年後見員制度でも、後見人による不正が発生しています。民事信託(家族信託)において受託者に悪意があれば、信託目的の達成は困難になります。

※成年後見制度の悪用被害 平成26年度 56億7千万円(内閣府HPより)

 

 

【受託者の権限】

信託法26条に受託者の権限が定められています。

-受託者は、信託財産に属する財産の管理又は処分及びその他の目的の達成のために必要な行為をする権限を有する。

 

このように、受託者には大きな権限があります。

 

信託財産は、受託者に名義変更します。金銭は、受託者名義の口座で管理することになります。これにより、委託者が認知症になっても口座が凍結されることがなく、財産管理ができるのです。自分名義口座の金銭となっても、自分の自由に使うことがないように強い自制心が求められるのです。

 

【受託者の責任】

①受託者は信託債権者に対して無限責任を負う。

 信託財産の名義は受託者となり、信託事務における契約等は受託者の名前で行います。相手側は、受託者と契約しますのでその結果債権が発生し、信託財産で足りない場合は受託者の財産から支払う責任が生じます。

 

②受託者が受益者に対して負う債務は有限責任。

 受益者に対する債権(生活費の給付など)は、信託財産が無くなれば履行する必要はありません。信託財産が無くなったときは信託契約は終了となります。

 

受託者に対する報酬は、原則ゼロです。(報酬を付与することは可能です)

報酬もないのに、大きな権限と義務をもって信託事務を行うのです。

民事信託(家族信託)は、受託者にふさわしい者がいることが最大の成立要件です。

 

推定相続人の関係が良好で、その中に信託事務を遂行できる人がいるような場合は、民事信託(家族信託)が究極の財産管理となります。