相続人以外の事業承継


こんにちは、信託コンサルタンタントの宿輪です。

 

民事信託(家族信託)は、制度ができてから10年以上経ちますが、実際に使われ出したのは最近の事で、身近で実例を見た方は少ないと思います。

 

この「信託情報」では、皆様の信託に対する疑問をランダムに取り上げ解説しています。


【本日の話題】

義父母が創業したレストランの相続対策についてのご相談でした。

長男である現社長の夫が経営を引き継いでいたが、病気でなくなり、現在の社長は長男の奥さんとなっている。

 

レストランの土地建物の所有者は、高齢の義母となっている。この義母が亡くなると、現社長は法定相続人ではない為、遺産分割協議に参加することもできない。

 

遺言ではどうにも解決できそうにない状態ですが、民事信託(家族信託)を活用すれば明るいゴールが見えそうです。


【状況】

家族関係は右のとおり。

義父が亡くなった後、長男である現社長の夫が跡を継いだ。

その後、長男が亡くなり、長男の妻である現社長になった、

 

経営は順調であるが、レストランの土地建物所有者である義母が高齢であり、相続発生した場合に以下の問題が発生する。

 

⓵財産は、本件不動産以外あまりない。課税評価額が高いため相続税も発生する予定。

 

②法定相続分に近い分割は極めて困難。不動産を相続しない相続人が取得できる財産がほとんどない。

 

子供たちは、今のところレストラン経営の意思はないため、いつまで続けられるか不明。

 

夫の兄弟も、できればレストランを続けてほしいと思っている。

 

⑤現社長は、義母の法定相続人ではない為、遺言で遺贈を受けない限りレストランの土地建物を取得することはできない。また遺贈すれば、土地建物は完全に社長個人の財産となるので、夫の兄弟に不満が発生し、遺留分を主張されると争族となる。

 

【会社使用財産保全信託】

⑴以下の内容の家族信託契約を締結

・委託者兼当初受益者:義母

・受託者:レストラン経営会社

・二次受益者:義母の法定相続人(夫の兄弟、社長の子)

・信託財産:レストランの土地建物

 

⑵義母の死亡を始期とする「不動産賃貸借契約」を義母と受託者(会社)との間で締結する。

 

*家族信託の効果

・土地建物は、会社で維持管理が可能となり、義母が認知症になっても支障がない。

 

・義母の死亡と同時に賃貸借契約がスタートするため、レストランの経営が継続できる。

 

・二次受益者となる法定相続人は、賃料を受け取ることができる。

 

・会社の意思で、土地建物の処分が可能となる。

(廃業時は売却して、金銭を二次受益者で分割する。)

 

民事信託(家族信託)の効果が最大限に発揮される事例です。

後見制度や遺言しかなかったときには、途方に暮れたことでしょう。


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なぜ信託を勧めるのか。

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