受託者の帳簿作成義務


こんにちは、信託コンサルタンタントの宿輪です。

 

民事信託(家族信託)は、制度ができてから10年以上経ちますが、実際に使われ出したのは最近の事で、身近で実例を見た方は少ないと思います。

 

この「信託情報」では、皆様の信託に対する疑問をランダムに取り上げ解説しています。


【本日の話題】

信託をスタートすると、その時から受託者には受益者のために信託財産を管理する責任が発生します。

 

受託者の判断で、管理しますが受託者の勝手に使っていいわけではありません。受益者などから請求があれば、資料を提示して説明する必要もあります。

 

会社であれば、経理担当がしてくれる業務ですが民事信託(家族信託)の場合、受託者がすることになります。どのような帳簿を作成すればいいのでしょうか。



民事信託(家族信託)では、受託者も家族であることが多いです。

 

例えば、親から資金援助を受けて自分のものを購入したり、事業資金などに充てることもあったかもしれません。しかし、受託者として管理する上では、信託目的の範囲内でしか使うことはできません。信託目的に「・・・の事業資金として必要な場合は、信託財産から資金を給付することができる。」などがあれば、事業資金として使ってもよいということになります。(贈与税の課税対象となる場合はあります。)

 

受託者の信託事務が適切にされ、計算や会計が明らかにされていなければならないのは当然です。

信託財産の管理は受託者がしますが、受託者の財産ではないのです。くれぐれも勘違いしないようにしてください。

 

【信託の計算】

信託法では

-信託の会計は、一般に公正妥当と認められる会計の慣行に従うものとする。(13条)

 

-受託者は、毎年1回、一定の時期に、法務省令で定めるところにより、貸借対照表、損益計算書その他の法務省令で定める書類又は、電磁的記録を作成しなければならない。(37条2項)

 

となっていますが、これで必要な帳簿を作れる人はいないでしょう。

 

要は、法務省令(信託計算規則)の定めにより帳簿類を作成しなさいということになります。

 

-信託帳簿は、一の書面またはその他の資料として作成することを要せず、他の目的で作成された書類又は電磁的記録をもって信託帳簿とすることができる。(信託計算規則4条1項)

 

つまり、会社の会計が作成するような厳密な帳簿ではなくてもよいということになっています。しかし、信託財産からの収益があり、税務処理が必要な場合には、当然それなりの正式な帳簿が必要になります。

 

弊所では、高齢者の認知症対策や遺言代用信託のような、収益が発生しない信託では、「家計簿程度の管理」をしてもらうようにしています。(領収書やレシートは絶対に無くさないよう注意。)

また、収益が発生するような信託の場合は、インターネットでダウンロードできる無料の会計ソフトをお勧めしています。

多額の収益がある場合は、税理士さんに依頼した方がよいでしょう。

 

帳簿類の保存は10年、信託の結了(清算事務迄完了したとき)があったとはその時までとなっていますので、きちんと保存するように注意ください。


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なぜ信託を勧めるのか。

スライドで説明します。

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