信託財産


こんにちは、信託コンサルタンタントの宿輪です。

 

民事信託(家族信託)は、制度ができてから10年以上経ちますが、実際に使われ出したのは最近の事で、身近で実例を見た方は少ないと思います。

 

この「信託情報」では、皆様の信託に対する疑問をランダムに取り上げ解説しています。


【本日の話題】

信託財産は、「委託者の財産から分離可能な管理承継できる価値のある財産」です。

 

法律上の記載としては、「受託者に続ずる財産であって、信託により管理又は処分をすべき一切の財産をいう。」となっています。

 

分かりやすくいうと、どういうことでしょうか?



信託財産とは、受託者に属する財産であって、信託により管理又は処分をすべき一切の財産をいうと規定されています。

 

しかし、財産であればなんでも信託できるというものでもありません。

 

【年金】

年金は、本人に直接渡す必要がありますので、受託者の口座に入金することはできません。

 

しかし、認知症になった場合など法定後見人を付けなければ引き出しできないなど非常に不便です。弊所では、ゆうちょ銀行の「利用代理人制度」を利用して受託者が年金口座の管理をできるようにすることがあります。

 

この制度は、あまり一般に知られていませんが、口座名義人が認知症になったあとも利用代理人が本人に代わって引き出しができるようになります。

 

受託者を利用代理人として、日常生活の費用はこちらの口座を使い、金額の大きい支払いがある場合に信託財産を使うこととすると、管理がしやすくなります。

 

【農地】

農地に関しては、所有者の変更をする場合には農地法3条の許可を受ける必要があります。

しかし、信託による所有者の変更は農地法3条2項3号で許可できないと規定されているため信託財産とすることができません。

 

農地のまま信託することができないということですので、農地法4条、5条により地目が変更されれば信託財産にできます。実際には、農地として活用しておらず、駐車場などとして活用できそうな条件がそろっているなら、これも検討できるのではないでしょうか。

 

【債務の引き受け】

信託財産は、金銭的に見積もることのできる積極財産であり、かつ委託者の財産から分離可能なものすべてが含まれるとされます。

 

従って信託財産は積極財産に限られ、消極財産は含まれないのが基本です。

 

しかし、これでは信託財産とする住宅のローンが残っているような場合に支障が出ます。

 

そこで、「信託前に生じた委託者に対する債権であって、当該債権にかかる債務を信託財産責任負担債務とする旨の信託行為の定めがある場合、この債務を信託で引き受けることができます。

 

さらに、信託財産責任負担債務のうち信託財産に属する財産のみをもってその履行の責任を負う旨を債権者との間で合意できれば、責任財産限定特約となり受託者の無限責任は免除されます。

 

債権の引き受けにあっては、債権者(銀行など)と協議し信託条項を作成する必要があります。


なぜ信託を勧めるのか。

スライドで説明します。

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