遺言と信託の相続での位置


こんにちは、信託コンサルタンタントの宿輪です。

 

民事信託(家族信託)は、制度ができてから10年以上経ちますが、実際に使われ出したのは最近の事で、身近で実例を見た方は少ないと思います。

 

この「信託情報」では、皆様の信託に対する疑問をランダムに取り上げ解説しています。


【本日の話題】

遺言で解決できない問題も民事信託(家族信託)を使えば解決できるようになりました。

 

では、遺言は不要になったのでしょうか?

 

委託者の財産の中には、信託財産にできないものもありますし、受託者に任せるべきでない財産もあります。これを補完するために、信託設定した場合でも遺言は必要になることが多いのです。


【遺言の意味】

遺言は、財産の分け方を本人が決めるためのものと理解されていますが、実はそれだけではありません。

 

遺言をすることで法律上の効果が発生する事項は、「法定遺言事項」として決められています。

 

・婚姻外に生まれた子の認知

・子が未成年である場合などの後見人や後見監督人の指定

・相続人の廃除の取消し

遺産分割方法の指定、及び、遺産分割方法の指定の委託

・遺産の全部又は一部の分割を禁止

・遺言執行者の指定、指定の委託

・遺留分減殺方法の指定

財産の贈与(遺贈)、及び寄付行為

・一般社団法人の設立

財産の管理、処分を行う信託の設定

・生命保険金受取人の指定、変更

・特別受益の持ち戻し免除

・祭祀主催者の指定

 

以上が法定遺言事項ですが、財産の分け方に関する事項は太文字にした3項目のみです。

 

遺言は、信託と違い身分上の行為ですから、財産に関すること以外に重要なことが指定できるようになっています。

 

民事信託(家族信託)で、死亡した後の財産の分割を指定したら遺言は不要ということにはなりません。信託財産に関すること以外は、遺言で意思を明確にしなければ相続人が話し合いで決める必要があるのです。

 

【信託できない財産】

民事信託(家族信託)で管理できるのは、信託財産のみです。しかし、個人財産の中には信託できないものもあります。

・マイナス財産(借金等)

・年金受取口座

・農地

などは、信託財産とすることができません。

 

信託財産にできない財産の分け方は遺言で指定しておかなければ、相続人が話し合いで決める必要があります。(借金は、法定相続分で相続されます。)

 

【家族の負担を軽くするために】

認知症対策で信託をする場合には、相続発生時の残余財産受益者を指定することで相続手続きが簡単になります。遺産分割協議は不要で、受託者が単独で信託の指定通りに財産を移動できます。

 

その上で、信託財産以外の財産分割方法や、身分上の法定遺言事項に関する意思を遺言することで、相続人の負担が軽くなります。

 

遺言で実現できない希望も信託なら実現できますが、信託があれば遺言が要らないというようなものではありません。

 

 


なぜ信託を勧めるのか。

スライドで説明します。

9分31秒