任意後見人と受託者の兼任

認知症になった場合の生活保全のための制度として「任意後見」というものがあります。任意後見では、後見人を本人の意思で指定でき、身上監護の部分まで代理人として行うことができます。(ただし、家庭裁判所から後見監督人を付けられます。)

 

財産の大部分を信託契約して受益者に託し、受託者を任意後見人に指定すれば、信頼する家族の一人にすべてお任せできることになります。

 

受託者と任意後見人の兼務は好ましいことなのでしょうか?



【任意後見制度】

後見制度には、法定後見と任意後見があります。

 

法定後見は、本人が認知症になった場合家庭裁判所が後見人を選任し、後見人が本人を代理して財産管理から身上介護まで包括的に行います。

 

対して、任意後見は、本人が認知症などになる前に公正証書で任意後見契約を結び、その後認知症などに罹患し、判断能力が欠けた時点で家庭裁判所が「後見監督人」を選任しスタートする後見制度です。本人の決めた任意後見人が、本人が決めた代理目録に沿った後見事務を行います。本人の判断能力があるうちにする契約により内容を決めますので、法定後見より本人の希望がかなえられる制度になります。

 

ただし、家庭裁判所の選定する後見監督人が付きますので、裁判所への報告等が必要であり、また、後見監督人への報酬(1.5万円/月程度)が必要になります。

 

【任意後見人の信託における役割】

民事信託(家族信託)の運営において、受益者は利益を受け取る権利を持つことに加え、受託者を監督する立場にあります。

 

この受益者が認知症になり、判断能力が無くなると受託者の監督もできません。

 

この受益者に後見人がいる場合には、後見人は受益者の代理人ということになります。

信託契約書に受益者代理人が指定されていない場合でも、後見人は受益者を代理することになります。

 

受託者が任意後見人を兼務した場合には、受託者と受益者代理人が同じということになってしまいます。すると、信託における基本的な仕組み(受託者と受益者の牽制作用)が成り立たなくなってしまいます。

 

受託者と任意後見人を同一人物とするのはNGと判断します。