事業承継の3パターン

現在、中小企業経営者の平均年齢は60歳を超え、事業承継は緊急の課題となっています。

 

しかし、今後10年間で70歳を超える経営者約245万人の約半分の127万人は後継者が決まっていません。

 

後継者の能力、人選、税金など、たくさんの問題をクリアしなければなりません。

 

民事信託の効用を活用すれば、多くの問題は解決できます。それぞれの状況に合わせ、信託をデザインしますが、大きく分けて3ターンの信託が考えられます。



①後継者に経営させる

   委託者:社長

   受託者:後継者

   受益者:社長

 高齢となった社長の負担を軽減しつつ、後継者を育てる信託。

 

 社長の持つ自社株を信託財産とします。

 後継者は受託者として、自社株の議決権を行使し会社の実権を握ることになります。

 株主名簿には後継者の名前が記載される。

 受益権は元の所有者のままですので、贈与税は発生しません。

 社長が亡くなったときに相続税が発生します。

 万一、社長が認知症などになっても実権の行使には支障が出ない。

 社長に自社株の指図権を設定すれば、元気なうちは社長の影響力は保持される。

 

②株価の低いうちに株を渡したい。

   委託者:社長

   受託者:社長

   受益者:後継者

 

 今後利益の積み重ねが予想され株価が高くなる会社の場合、①の信託では相続税が高くなってしまいます。今のうちに贈与して、経営実権の移動はもう少し先にしたい場合は、このパターンが使えます。自己信託と言われる信託で、委託者が受託者となり受益者を設定することになります。

 

 受益者に贈与されたものとみなして贈与税が発生。

 社長は、受託者として会社の経営を継続。

 社長が亡くなったときには、相続税の対象にはならない。

 

 このパターンでは、後継者の経営能力が心配なくなったら、社長と後継者の合意により信託を終了し、会社の実権を移動することになります。

 

③一旦後継者に贈与する

   委託者:後継者

   受託者:社長

   受益者:後継者

 

 中小企業のほとんどは、株式の配当はありません。そうすると、受益権が設定されていてもほとんど利益は無いということです。ですから②のパターンの場合、後継者から見ると「議決権はないし、利益もない」≒「今までと変わらない」と感じられます。それで、後継者と自覚した仕事を期待されても、難しいという人もいるでしょう。その場合、このパターンが考えられます。

 

 社長から後継者に自社株を贈与または売却します。

 その後、後継者が委託者となり自社株を信託財産として、信託を設定します。

 会社の実権は社長が行使することで、経営の安定を図ります。

 受益権は後継者になっていますので、相続の問題は発生しません。

 

【信託終了の注意】

 信託法により、委託者と受託者が同意すれば信託を終了することができます。

    委託者  受益者

 ①  社長   社長   社長1人で終了できる

 ②  社長   後継者  社長と後継者の合意で終了できる

 ③  後継者  後継者  後継者1人で終了できる

 

③の場合、後継者が信託を終了させてしまえば。完全に会社の実権が移動してしまいます。

事業承継をどのパターンの信託で進めるかは、しっかりと検討する必要があります。