民事信託の善管注意義務


こんにちは、信託コンサルタンタントの宿輪です。

 

民事信託(家族信託)は、制度ができてから10年以上経ちますが、実際に使われ出したのは最近の事で、身近で実例を見た方は少ないと思います。

 

この「信託情報」では、皆様の信託に対する疑問をランダムに取り上げ解説しています。


民事信託の受託者は、業としてすることはできませんので原則無報酬です。身内の財産を管理するのですから当たり前かもしれませんが、善意の管理者としての注意義務(善管注意義務)が課されます。

 

善管注意義務=その職業や地位にある人として通常要求される程度の注意

とされます。

 

職業として(有償で)受託した人と同じくらいの注意を払わなければいけないのです。


【善管注意義務】

例えば金銭であれば、現金のまま財布で保管ではなく、専用の通帳で管理し出勤した場合は、使途が分かるように証憑を保管するなどが必要になります。

 

不動産を売却するとなれば、一社ではなく数社から見積もりを取り条件の良い契約とするように努力することが必要です。

 

自分の財産であれば、注意不足で損してとしても自分が損するだけですが、受託者としての取引では、損害を受けるのは受益者となります。万が一、善管注意義務を怠り損害が発生したときには、受託者は自分の財産で損害をてん補しなければなりません。

 

受託者を受けるからには、相当の覚悟が必要です。

 

【善管注意義務の軽減】

信託法では、家族内での信託を想定して信託契約書に定めることで、善管注意義務を軽減してもよいことにしています。ただし、具体的な軽減については記載がありません。

 

軽減に対する法解釈として、「自分の財産にするのと同じ注意」までは軽減できるという考えが一般的です。

 

でも、自分んお財産についてする注意は人によって大きく違います。きちんと帳簿などを作り計画的に貯蓄をできている人もいますし、まったく片付けもできず部屋に現金を置きっぱなしなんて人もいます。

 

後者のような人に「自分の財産と同じような管理」を信託財産にされると、民事信託の趣旨に合わないことになります。目的を達成できなくなった信託は、終了することになります。

 

家族が無償でするのですから、多少軽減することは良しとしても、いい加減な管理しかできないのであれば受託者として不適格となります。受託者は、善管注意義務を果たすことを前提に就職すべきであり、軽々しく軽減条項を追加するのは勧められません。