信託で空き家対策

こんにちは、信託コンサルタンタントの宿輪です。

 

民事信託(家族信託)は、制度ができてから10年以上経ちますが、実際に使われ出したのは最近の事で、

身近で実例を見た方は少ないと思います。

 

この「信託情報」では、皆様の信託に対する疑問をランダムに取り上げ解説しています。

信託で空き家対策

全国的に空き家が増加しています。

 

超高齢社会もあり、人口は減る中で住宅戸数は増えていますので、乙全の結果と言えます。

 

誰しも、自分が育った実家がみすぼらしい空き家になるのは、望んでいません。建物の耐用年数が過ぎたら、建て直したり撤去して更地にすることができれば良いのですが、それが難しい状況になることがあるのです。

 

不動産の所有権を単独にすることが、一番の対策にります。

 


【一番の原因は相続】

相続が発生(所有者の死亡)があったとき、すぐに相続手続きで次の所有者が決まれば、その後の所有者の判断で処分ができますので、空き家になることは少なくなります。

 

所有者は、所有不動産について100%の権利を持ちますので、家族が反対したとしても売却等の処分ができます。

更地にすることも

賃貸で他人に貸すことも

自分で住むことも

所有者の判断でできます。

 

しかし、相続発生の後、所有者が決まらなかったり、所有者が複数になると状況が変わります。

所有者が決まらない。➢名義人の法定相続人が法定相続分で所有(共有)となる。

所有者が複数➢所有者全員の所有(共有)となる。

 

共有不動産は、全員が合意しない限り処分ができません。

持分99%の人が処分したいと思っても、持ち分1%の人が反対した場合処分ができません。

持分1%の人が認知症で意思能力が無い状況になると、合意ができなくなり処分ができません。

 

名義人が死亡したとき、相続の話し合いがうまくまとまらない場合、とりあえず法定相続分の共有にすることがあります。

遺産分割協議で分割方法を決めて相続登記をするには、相続人全員の合意が必要ですが、

法定相続分で登記するときは、相続人の一人でできるのです。

 

令和6年4月には、相続登記の義務化が始まりますので「とりあえず法定相続分で登記」はこれまで以上に増えるでしょう。

 

【共有不動産】

不動産の共有はできれば避けたいというのは、理解しやすいと思います。

しかし、避けられないこともあるのです。

 

例えば、

不動産以外の遺産が少ない。

一人の相続人が不動産取得すると、他の相続人の取得できる遺産が少なく不公平になる。

賃貸アパートがあり、賃借人がいるためすぐに処分はできない。

賃料収入もあるので、共有として賃料を持分で分割する。

というような場合です。

不動産を売却してお金を分けることができれば良いのですが、不動産はいつ売れるが分かりませんし、

買い手が現れても、その条件に共有者の全員が合意しない限り契約はまとまりません。

何年か経つうちに、相続人が認知症になってしまうと、処分ができなくなってしまいます。

 

【共有不動産の信託】

共有不動産を信託すると、受託者の判断で処分ができます。

持分を受益権にして、賃料や売却代金などは元の共有者が取得することができます。

 

上の例を信託すると、

アパートを信託財産として、受託者が管理します。

受託者の判断で、補修工事などもできますので、収益が期待されます。

収益は受益者が受取ります。

耐用年数が経過したら、売却や建て替えも受託者の判断でできます。

信託期間中に受益者が認知症になっても、アパートの管理処分には影響しません。

受益者が亡くなったときには、その相続人が受益権を引き継ぐようにします。

 

アパートを売却して、代金を分配したところで信託は終了します。

 

【受託者は所有権者】

なぜこのようなことが可能になるのでしょうか。

受託者は所者ではありませんが、所有権を行使することができる者です。

ですから、法律行為の相手は、受託者を所有者として取引ができるのです。

委託者(共有者)や受益者の意見を気にしなくていいのです。

 

そのことが、登記簿に記載されているのです。

 

信託法に基づいて正式に手続きをした家族の信託であれば、

全員の合意が無ければ処分のできない不動産が、

1人の判断で処分までできる不動産に変換されるのです。

 

信託をせっていすることで設定することで、

処分ができずに空き家となってしまうという状況を

減らすことができます。