信託の終わり方

こんにちは、信託コンサルタンタントの宿輪です。

 

民事信託(家族信託)は、制度ができてから10年以上経ちますが、実際に使われ出したのは最近の事で、身近で実例を見た方は少ないと思います。

 

この「信託情報」では、皆様の信託に対する疑問をランダムに取り上げ解説しています。


信託終了事由を考える

契約で信託を開始すれば、契約で終了事由も決めることになります。

 

認知症対策で信託を組成する場合、委託者死亡により終了とすることが多いです。委託者死亡時に信託財産は残余財産に変わり、信託管理ではなく清算事務に移行します。

 

最近では、委託者死亡後のお金のかかることまで、信託で支払いをしたいという希望も多くなってきました。

 

個別の希望に合わせた管理法を設計できるのが信託です。


【終了事由】

信託法には、法定終了事由があります。

・信託財産がなくなった

・受託者がいなくなり1年経過

・受託者=受益者となり1年経過

等です。

通常は、こうなったら終了としますという「終了事由」を契約書で指定します。

 

法定終了事由ではなく、委託者の希望する終了事由で終了となるように信託を設計します。

 

【委託者死亡による終了】

後見制度と同じ終了事由になります。委託者が生存している期間の財産管理を信託でするというものです。終了時点で信託による財産管理は終了し、そのあとは残余財産の清算に入ります。

 

委託者の死亡後には、葬儀やその後の法要、お墓関係の費用などいろいろとかかりますが、その支払いは相続人で調整しなければなりません。きちんと仕切れる人がいれば大丈夫ですが、相続人である兄弟の仲が良くないとか、海外居住の相続人がいるなどの場合には、死亡後の費用負担でもめることもあります。

 

【委託者死亡後もしばらく信託を続ける】

終了の時期は、個別の状況に合わせることができます。

例えば、「委託者兼受益者の死亡から2.5年経過したとき」とすれば、委託者の3回忌の後しばらくして落ち着いたころに終了になります。葬儀や法要お墓関係の費用は信託で支払い、きちんと3回忌まで受託者が財産を管理し、残った財産を信託で決めた方法で分割して結了(完全な終了)となります。

 

これであれば、委託者の希望する死後事務の履行が担保されます。

 

3回忌までか7回忌までやるか、とか、墓じまいをするか否かなど、信託契約で希望を明確にできます。

 

信託財産は「遺産」ではありませんので、委託者の死亡により相続とはなりません。

信託が続く限り受託者の管理が継続します。

そして、終了時点で「残余財産」となり清算受託者によって「残余財産受益者」に分配されます。

清算受託者の残余財産の処分が終われば、結了(完全な終了)です。

 

親の祭祀法要をするにあたり、費用負担などでもめる可能性がある場合には、委託者死亡から一定期間信託を継続することを検討してください。