権能なき団体の信託

こんにちは、信託コンサルタンタントの宿輪です。

 

民事信託(家族信託)は、制度ができてから10年以上経ちますが、実際に使われ出したのは最近の事で、身近で実例を見た方は少ないと思います。

 

この「信託情報」では、皆様の信託に対する疑問をランダムに取り上げ解説しています。


権能なき団体(社団)の信託


団体が不動産を所有するとき、法人であれば所有者となることができます。しかし、権利能力のない団体は、所有者となることができないため、代表者個人の名前で登記されたりします。これは、相続財産ではないのですが、個人名義のため相続が発生した場合などトラブルの元になってしまうこともあります。

 

権能なき団体のうち町内会については、要件を満たすと自治体の認定を受けて不動産の所有者となることができるようになっていますが、他の権能無き団体にはそのような制度がありません。

 

民事信託を活用すれば、不動産の有効活用が相続などに影響なくできるようになります。


【総有の土地】

所有や共有ではなく、総有の土地を言うものがあります。

地域で管理する土地で、地域の人が使う山であったり、ため池や用水路などがあります。(入会地)

そのような土地は、地域の人全員の財産で「総有」といわれます。

総有の土地は、所有者が字名義になっていたり、〇〇〇〇他30名などと登記されたりしているものもあり、所有者不明土地になってしまいます。

 

権能なき団体所有の不動産でも、代表者など個人名義で登記されている場合には、相続の際にきちんと変更がされればいいのですが、トラブルになることもあります。

 

【信託例】

・昭和の初めに組織した地主会が、50筆の不動産を所有している。もともとはため池や調整池など入会地であったものが、開発により固定資産評価額で5億円の不動産になっていた。

 

・地主会名義の登記ができないため、複数の代表者が共有名義で登記している。

 

・名義人が高齢化しており、認知症による不動産管理処分に関する手続き上のトラブル、相続によるトラブルなどが予想される。

 

 

①地主会の所有する不動産を管理するための一般社団法人を設立。

 

②一般社団法人の理事には、地主会の役員が就任

 

③地主会と一般社団法人が信託契約を締結

 

④受益者は地主会。

 

 

 

 

これにより、地主会は存続したまま、一般社団法人が受託者として不動産の管理処分ができるようになります。法人として管理しますので、メンバーの相続などによる影響はありません。利益の分配などは、地主会の規約に沿って可能となります。

 

地主会を法人化して、法人名義とする場合には、法人に不動産取得税などが発生しますが、この信託は自益信託ですので不動産取得税や譲渡所得税などは発生しません。

 

法人住民税(7万円/年)など、少額の費用が発生し、経理も少し厳格化されますが、これまで以上に明確な管理となり、地主会メンバーも安心できます。